この小説を読んでいると気持ちがどっぷりと浸かってしまい、感情移入しているからなのだろう、おもったるい気持ちになった。映画やTVドラマを見てもここまで気持ちが違う世界に迷い込むことは最近はない。
角田さんの文章がそうさせているのは間違いない。読み終えてからもしばらく心が重く感じていた。
昔思っていたことが、最近は全く考えていないのだなぁ、とこの本を読んで気がついた。それは今の自分の生活が、この物語に出てくる「ふつう」という生活だからなのかもしれない。
先日読んだ中脇初枝著「きみはいい子」を読んだときも感じたのだが、子供のときに過ごした生活が、その人の将来の人生に大きく大きく影響を与えるのだと思う。
この物語は、さまざまなゆきずりの男の家へ転々とする母親と一緒に暮らす男の子の智(さとし)が、成人して母親と同じような生き方をしてしまうというもの。
今回のピックアップ。この物語のテーマと思える「縁」についての記述箇所。
◇ ◇ ◇
「縁。智(さとし)はつぶやいて、そうして底の見えない深い井戸をのぞき込んだような気分になる。
人は、意識的に、また無意識的に行動する。大きなことではない。ちっぽけなことだ。
財布を家に忘れてとりにいくとか、待ち合わせに早すぎて本屋にふらりと立ち入るとか。
腹が減って立ち食い蕎麦屋に入るとか、駅で知り合いに会って一本遅い電車にのるとか。
そのなんでもない行動は、波紋のように広がっていく。あまりにも素早く、あまりにも広範囲に広がってくから、
自分たちに止めることはできない。呆気にとられて眺めているしかない。
動いたら、自分の関与できないものごとがはじまってしまうのだ。それを人はのんきに縁などと呼ぶのか。(略)」
◇ ◇ ◇
「縁」について深く考えようとすると、目が回ってくる気がする。。。
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