土曜日, 12月 12, 2015

[12/12 Sat] ▽ここに歴史が繰り返される素がある


 毎週土曜日に見ているNHKの『週刊ニュース深読み』。今朝の後半の特集は「妖怪って?人間って? 水木しげるが残したもの」だった。

 水木さんは、日本人の心に響く妖怪の世界を描き、また自分の体験からの戦記漫画を描いていた。

 悲惨な戦争体験者が、また一人この世を去った。水木さんの漫画には悲惨な人間の亡骸も描かれている。こういう画を見ると、少なからずとも人の心に大きく突き刺さるものを感じると思う。

 日本が戦争をしていた頃を描いた映画を見ると、実際に戦争による無惨なシーンは、しっかりとは描かない。それは映像化する上で、表現したかったことは、戦争が悲惨な事より、主人公達の生き様などを中心に描きたいからだからなのだろう。
 悲惨なことを知っている人には、その事を知っている上で、主人公の生き方を感じることができる。しかし悲惨さを知らずして、その物語を見てしまうと、主人公が活躍した戦争そのものが肯定されてしまうな気がしてならない。

 二日前、戦争の悲惨さを知っている作家の野坂昭如さんが亡くなった。

 僕は中学時代、TBSのラジオ番組を良く聞いていた。野坂さんは永六輔さんの番組に良く出演していて、戦時中の話を永六輔さんとしていたのを聞いていた。 僕の戦争時の話は、親でもなく、祖父祖母でもなかった。戦時中の食べ物が無かった話は聞いていたが、生死にかかわる悲惨な話は身内に経験者がいないこともあり、もっぱらラジオのパーソナリティからその経験談を聞いていた。
 今年亡くなった愛川欽也さんも、中学時代からの大ファンで、深夜放送でエロい話と共に、正反対の戦時中の話を聞いていた。3年前に亡くなった小沢昭一さんも同じくTBSのラジオで戦時中の話を聞いた人の一人だった。

 戦争の悲惨さを身に染みて知っている人の、生の声がどんどん聞くことができなくなった。経験者の話は、経験しただけのことはあり、聞いている人間にもズシリとその気持ちが伝わる。
そのような人たちが世を去ると、歴史は繰り返されるのだと思う。たとえ、文章やビデオが残っていても、生身の人間が話しかける力には及ばないような気がしてしまう。

 戦後70年。4日前の12月8日は日本が米国ハワイの真珠湾に攻撃した、つまり太平洋戦争を始めた日。今年で74年。世界は全世界を巻き込むような悲惨なことが、再び起こりそうな気配がしている。戦争は、どんなに時代が流れようとも悲惨なことには変わりない。なのになぜ人間は戦争を正当化して戦うのか。



 最後に水木さんの心に響く言葉の七カ条。特に第一条は、日本が戦争をしていた頃の反省が込められているとのことだ。

水木しげるの『幸福の七カ条』

第一条
     成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。

第二条
     しないではいられないことをし続けなさい。

第三条
     他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。

第四条
     好きの力を信じる。

第五条
     才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。

第六条
     怠け者になりなさい。

第七条
     目に見えない世界を信じる。



 戦争の時代を経験した亡くなった方々のご冥福を祈ります。


0 件のコメント: