月曜日, 8月 13, 2012

[8/13 Mon] (6月の本とDVD) ▽小澤征爾

▽ 「小澤征爾 指揮者を語る 音楽と表現」 100年インタビュー製作班 PHP研究所

▽ 「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾×村上春樹 新潮社

▽ DVD 「小澤征爾+サイトウ・キネン・オーケストラ 2008」

 僕が小澤征爾を知ったのは、高校生の時だった。数学者の広中平祐さんの対談集を読んだときだった。小澤氏と広中氏の対談本だ。たしかNHKの番組で数学者の広中さんの特番をやっていて興味がでて、自由が丘の本屋に並んでいた対談本を買ったのだった。広中さんのお相手の小澤征爾氏が音楽武者修行のため、貨物船に乗りメーカに借りたスクータで、単独ヨーロッパにのりこんだ武勇伝に感動してしまった。そして小澤氏のトレードマークのような髪型が目にとまった。自分は髪が細く柔らかめなので、あの獅子のたてがみのようなヘアスタイルにあこがれていたのだ。

対談でも話し言葉なので、その人柄を感じるのだけど、テレビ番組の小澤征爾特番でみる会話を聞いていても、あの心の温かさを感じる雰囲気にあこがれをもっていた。
今回読んだ本では村上春樹氏との対談である。クラシックを愛する村上氏が小澤氏との専門的な話にもおよぶ会話は面白い。作家と指揮者の生活の共通点なども語られ、おもわず、そうなんだ、と感心してしまう。



 <心を引きつけられた箇所をピックアップ>

「生き方との傾向として、共感を抱けるところがある」ということだ。
まずひとつは、我々のどちらもが、仕事をすることにどこまでも純粋な喜びを感じているらしいということだ。音楽と文学という領域の違いはあれ、ほかのどんなことをするよりも、自分の仕事に没頭しているときが何より幸福だ。そしてそれに熱中できているという事実が、何よりも増して深い満足を与えてくれる。その仕事によって結果的に何がもたされるかというのも、もちろん重要ではあるけれど、それとは別に、集中して仕事ができること、その作業に時間を忘れて心から打ち込めること、そういうこと自体が何ものにも換えがたい重要な報償となっている。

  ◇  ◇  ◇
ものを創造する人間は基本的にはエゴイスティックにならざるを得ない、というとけっこう傲慢な物言いになってしまうが、それは好むと好まざるとにかかわらず、紛れもない事実である。いつもまわりを見回して、波風を立てないように、他人の神経を逆なでしないように、常にうまい落としどころを考えながら生活を送っていたら、どのような分野であれ、その人には創造的な仕事なんてまずできないだろう。ゼロの地平から何かを立ち上げるには、個人的な深い集中が必要とされるし、個人的な深い集中は多くの場合、他人との協調とは無縁の、あえて言うならデモーニッシュな場所で進行させられるからだ。

   ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

0 件のコメント: